オフショア開発で直面しやすい4つの課題とは?解決のコツも併せて紹介
オフショア開発には、「優秀な人材を少ないコストで集めやすい」という、日本企業にとって見逃せないメリットがあります。とはいえ、オフショア開発に興味を持つ日本企業の担当者の方は、「実際にはどのような課題があるのか」「海外の会社とうまく意思疎通ができるのか」といった点が気がかりかもしれません。
たとえ課題に直面したとしても、スムーズに解決するコツを事前に知っておけば安心です。そこで今回は、オフショア開発で直面しやすい4つの課題と解決方法、実際の解決事例を紹介します。
Contents
そもそも、オフショア開発とは?
オフショア開発とは、システム開発や運用保守管理などを海外企業や海外現地法人に委託することです。基本的には、IT人材が豊富な国のオフショア開発会社に、システム開発や運用保守管理のアウトソーシングをします。
オフショア開発では、技術力が高い海外のエンジニアに、日本よりも安い単価で業務を委託できるため、大幅なコスト削減が可能です。また、日本のIT業界が抱える「優秀なIT人材の不足」といった課題も同時に解消することができるでしょう。
オフショア開発が注目されている2つの背景
続いては、オフショア開発が日本企業から注目されている理由をご紹介します。
日本の深刻なIT人材不足
オフショア開発を活用する企業が増えてきた背景としては、やはり日本のIT人材不足が深刻化してきたことが挙げられます。
みずほ情報総研株式会社の『IT人材需給に関する調査(2019)』によると、2030 年時点でのIT人材の需給ギャップは、16.4 万人~78.7 万人に上ると試算されています。
2018 年時点の IT 人材の数は 103.2 万人とされていますが、業界の規模は今後も拡大が見込まれる一方で、日本の労働人口は減少し続けているため、人材不足は今後ますます深刻化していくことが予想できます。
プロジェクトを滞りなく進行するには、人材の確保が最重要です。しかし、ベテランの技術者の離職や退職の後、その人的損失を国内の新規採用だけで補うのは難しいものです。
このような理由から、近年は海外の優秀なエンジニアに注目する企業が増えてきているのです。
ビジネスのグローバル化
オフショア開発が普及してきた背景としては、ビジネスのグローバル化も挙げられるでしょう。急速にインターネット技術が発展した近年、海外展開に対するハードルは下がりつつあります。さらに、昨今ではクラウドシステムの普及により、海外との情報共有もしやすくなりました。
中小企業の海外展開が活発化するのにともない、オフショア開発に興味を持つ企業も増えています。また、ビジネスのグローバル化が進んで市場競争が激化するなか、さらにクオリティの高いシステム開発が求められるようになりました。
システム開発・運用にかかるコストを抑えつつ、技術力の高いエンジニアを雇えるオフショア開発は、今後ますますメジャーになっていくでしょう。
オフショア開発で直面しやすい4つの課題
オフショア開発で海外の人とスムーズにやり取りするには、想定される課題を事前に知っておくことが大切です。ここでは、オフショア開発で直面しやすい4つの課題について確認していきましょう。
言語・コミュニケーションの問題が生じやすい
オフショア開発を利用する際には、英語でのやり取りが中心となります。母国語以外でコミュニケーションをとる場合、どうしても言語の壁が立ちはだかるものです。進捗状況の報告や仕様の理解がうまくいかなければ、のちに大きなトラブルに発展しかねません。
オフショア開発の委託先によっては、日本語でコミュニケーションをとれることもあります。しかし、日本語を話せる委託先を選ぶと、その分コストが高くなるケースもあるでしょう。また、日本語の習熟度にも差があるため、細かいニュアンスが適切に伝わらない、という可能性もあります。
ビジネスにおける習慣・文化の相違
海外の法人とビジネスを進めるなら、その国ならではの習慣や文化を理解することが重要です。日本人の当たり前が、海外ではまったく通用しない、ということもよくあります。
例えば、日本では時間を守ることが鉄則とされていますが、海外ではその時間感覚に驚かれることがあります。また、「仕事が終わらなければ残業する」という日本人の一般的な感覚も、海外では理解されないケースが多いです。
長期的に良好な関係を維持するためにも、日本の常識に無理やり当てはめて強要することは避けましょう。国ごとに培ってきた習慣や文化があるため、その違いを理解し歩み寄ることが大切です。
要件・仕様を統一させるのが難しい
海外の人と協力してシステム開発を進めるなかで問題となるのが、要件や仕様を統一させるのが難しいという点です。一つのプロジェクトに多数のエンジニアが関わる場合、案件や仕様の伝達ミスが発生するケースがあります。その結果、制作物の完成度が低い、仕様に沿わない箇所が多数ある、といった問題が発生し当初の納期に間に合わなくなる、という事態にもなりかねません。
要件や仕様について正しく理解してもらうためには、委託先の管理体制を見極めることが重要です。また、こちらの伝えたい内容が明確に伝わっているか、都度確認する癖をつけておく必要があります。
業務の進捗・開発内容の管理がしづらい
オフショア開発では、業務の進捗や開発内容の管理が難しいという課題もあります。委託先は地理的に離れており、移動には時間がかかること、時差が大きければリアルタイムでのやり取りがしづらくなること、などを理解しておかなくてはなりません。
ビデオチャットや電話でコミュニケーションを図ることもできますが、いずれにしても国内での開発よりも業務の管理が難しいことを理解しておきましょう。そして、最終段階で大幅な修正が発生しないよう、進捗と開発内容の管理に注意を払う必要があります。
オフショア開発の課題を解決するコツ
オフショア開発には課題もありますが、委託する側の努力によって、ある程度解決できるものがほとんどです。ここでは、オフショア開発における課題を解決するためのコツを紹介します。
意識して積極的なコミュニケーションをとる
オフショア開発において最も大きな問題となるのが、開発現場とのコミュニケーション不足です。案件や仕様、品質の基準など意識を統一すべきものは多々ありますが、それ以外でも積極的に議論するなどして、活発なコミュニケーションを図りましょう。言語の違いがある場合でも、相手からの言葉を待つのではなく、こちらから意識的に声をかけて良好な関係を築き上げることが大切です。
リアルタイムで円滑にやり取りするなら、なるべく時差の少ない国を委託先として選ぶことをおすすめします。例えば、ベトナムであれば時差がですので、時間的なコミュニケーションのストレスを最小限にできるでしょう。
認識の相違を回避するための努力を怠らない
現場を直に見て開発状況をチェックするのは難しいものの、委託先に開発を丸投げするのではなく、委託する側が進捗管理を確実に行なうことが重要です。ただし、言語の壁による理解の相違が生まれないよう、上手にものごとを伝える工夫を重ねましょう。
例えば、何かを説明する際には図で示したり、実際にソースコードを用いて説明したりすることで、こちらの意図を伝えやすくなります。電話やメール、チャットのほかに、Web会議システムを導入するのも良い方法です。進捗確認についても、フォーマットを作って毎日報告を行なうことで、現場の状況を把握しやすくなります。
ノウハウを蓄積しやすい契約形態をとる
オフショア開発の契約形態としては、プロジェクトのたびに契約を結ぶ“受託型開発”と、一定期間人材を確保する“ラボ型開発”があります。もし委託する案件が豊富にあるなら、優秀な人材に定期的に依頼できるラボ型開発を選択するのがおすすめです。
受託型開発の場合、決まった仕様以外のことを対応してもらうには、その都度契約を交わす必要があります。それに対し、ラボ型開発の場合はプロジェクトの有無に関わらず、委託先でのメンバーを一定期間確保する契約形態のため、ノウハウを蓄積しやすいメリットがあります。
また、ラボ型開発はプロジェクトごとに契約する形ではないので、契約期間中であれば急な別プロジェクトにも参加してもらえます。また、プロジェクトの途中で内容の追加や仕様変更が発生した場合も、追加のコストは原則発生しません。
【ベトナムのオフショア開発会社】レリパとお客様が抱えた課題の例
最後に、ベトナムのオフショア開発会社であるレリパが、日本のお客様との仕事で直面した課題に対して、どのような方法で解決したのかを紹介します。
課題1:ビジネスにおける習慣・文化の相違
あるプロジェクトでは、「メンバーが定刻の報告を忘れてしまった」「業務が忙しく、レスポンスのタイミングが遅れてしまった」などの問題が日常的に起こっていました。
その結果、プロジェクトが停滞し、徐々にチーム全体の雰囲気が悪くなってしまいました。
課題1に対するレリパの解決策
レリパは、お客様にプロジェクトの進捗報告や振り返りの時間を設け、コミュニケーションを密に行なう体制をとりたいと申し出ました。そして、以下のようなアクションを実践しました。
- Slack、Microsoft Teamsでリマインドボット(remind bot)を作る
- プロセスをチェックするため、定期的に質問応答の機会を設けてもらう
- 反省のミーティングを行なう
- メンバーに働き方をトレーニングする
意思疎通のしやすい環境を整え、相互理解に努めた結果、チームに一体感が生まれ、全体の雰囲気を改善することができました。
課題2:業務の進捗・開発内容の管理がしづらい
あるプロジェクトではお客様が多忙であったため、レリパの作業チームとの定期確認の時間をあまり取れませんでした。その結果、完成した制作物がお客様のイメージと異なり、「期待外れだった」と言われてしまいました。
課題2に対するレリパの解決策
業務の進捗確認や開発内容の管理は、制作物の仕上がりを左右する重要な要素です。そのため、お客様には必ずレリパチームとの時間を確保していただくように、あらかじめお伝えするようにしました。そして、週1回30分のWeb会議を行なうことを徹底した結果、イメージのズレが解消され、同様のトラブルは以後発生しなくなりました。
課題3:要件・仕様を統一させるのが難しい
あるお客様は、プロジェクトの詳細が確定しないうちに予算や日程などの大枠を社内で決定してしまっており、その状態でレリパへ相談依頼となりました。
課題3に対するレリパの解決策
プロジェクトを複数の段階(フェーズ)に分け、慎重に検討しながら進めるよう、お客様に向けてコンサルティングしました。このとき、初期費用はやや高くなるものの、フェーズ1となる“要件定義”や“mockup”作りの段階から、レリパがお手伝いするほうがスムーズである旨をお伝えし、そのように進めることになりました。
その結果、プロジェクト進行中に発生しがちな要件変更・仕様変更などによる損失を、事前に回避できました。
まとめ
日本のIT人材不足、ビジネスのグローバル化によって、今後もオフショア開発の活用を検討する企業が増えると予想されます。オフショア開発を行なう際には、日本人としての価値観や考え方だけでものごとを判断するのではなく、その国の習慣・文化を理解したうえで、密なコミュニケーションをとりながら、状況に合わせた判断をしていく必要があります。
加えて、想定される課題と、それに対する解決策を事前に把握しておくことで、より円滑にプロジェクトを進めることができるでしょう。
それでも、オフショア開発に関する疑問や不安が拭えない、という場合は、日本企業に特化したベトナムのオフショア開発会社 レリパにご相談ください。
レリパは、立命館大学卒の3人のベトナム人が立ち上げた会社で、日本の文化やビジネスのスタイルにも精通しています。
「オフショア開発に興味があるけれど、海外法人とのやり取りは経験がなく、躊躇している……」といった企業担当者の方は、お気軽にレリパにお問合せください。